話題の動画「PNSP」国立劇場の仕掛け人に聞く! 「奇跡が重なったけど、いいものを作れば見てくれる」

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桐田:12月上旬に、語尾が同じ韻を踏んでいる歌舞伎の小道具はないものかとずっと考えていたんですけど、アイテムとして「三方」と「塗三方」を思いつきまして(笑)

CIMG6890s_2 ▲こちらが実際に動画で使用された「三方」と筆。

――多くの方が気になっていたと思うんですけど、何で「三方」なんだろうっていうのは、音優先なんですね?

桐田:音と、伝統芸能の世界でよく出てくる小道具ということで。お正月には鏡餅が載せられているのをよく見かけられたと思います。初春歌舞伎公演でも、最後に手ぬぐい撒きする時に手ぬぐいを載せていますし、ちょうどよいかと。

――韻を踏んだアイテムを、しかもちょうどお正月ということで、おめでたさというところでも合致していたんですね。

桐田:(三方は)本当によく芝居に出てくる小道具なんです。すぐには思いつかなかったんですけど、ちょうど12月歌舞伎公演の「仮名手本忠臣蔵」九段目の「山科閑居の場」で象徴的に「三方」を使っていたんです。松本幸四郎さんが演じられている加古川本蔵という役が、バキバキバキって踏み壊すんですよ。それを見て「あっ!ここにあるじゃないか!」って。

――日本で暮らしていると、ある程度見慣れてはいる物だと思うんですけど、「これ『三方』って言うんだ!」というのが一気に広まりましたよね。さらに塗ったら「塗三方」なんだっていう()

桐田:そうそう(笑) 「アップル=三方」は思いついたものの、パイナップルの部分はどうしようかなっていうのでまたひと考え。「塗三方」は、日本語大辞典も調べて、本来は「さんぼう」という読みなんですが、「さんぽう」とも読むいうような書き方をしている辞書もあって。いずれにしても読み方としては、アップルとパイナップルの韻に合わせるということを優先しました。

――動画制作のスケジュール的な部分を伺えればと思います。制作期間は1ヶ月くらいあったんですか?

桐田:大体そのぐらいですね。12月10日ぐらいに「三方」っていう歌詞を思いついて、こんなことでやりたいって邦楽の担当と、映像会社に申し入れて、今月中には撮りたいなっていう話をしました。そうしないとネタとしての鮮度が気にはなっていたので(笑)

――年内で決着を(笑)

桐田:初春歌舞伎の宣伝と結びつけたかったので、年内には収録して年初には発表できるようにスケジュール調整をしました。12月26日に長唄とお囃子の演奏者が集まってくれて、収録は4時間ぐらいかかったのかな。曲をこうして下さいっていう細かい指示まではしていなくて、プロにお任せでした。

ただ、あくまで長唄に寄せた長唄版にしてほしいということは伝えさせていただきました。編曲の東音塚原勝利さん、(お囃子の編曲である)作調の藤舎呂英さんが、セッションのようにその場で1時間半か2時間ほど、編曲作業をしていました。

――その場で作っていったんですね。まるでジャズのセッションみたいな!

桐田:作り出すところは本当にセッションみたいな感じでしたね。曲が出来た後は、まずマイクできっちりした音を録って、その音に合わせて演奏しているところを撮りました。12月26日に収録して、編集された映像が上がってきたのが、年末年始が落ち着いた1月10日ごろでした。

年末には我が家でも紅白歌合戦を見ていて、その後「今夜も生でさだまさし」も見ていたんですが、そのうちさだまさしさんが「じゃあちょっとPPAPの和風版作ったんでどうぞ」と披露してきたので、「えっ!」って驚きましたね(笑)

――心中穏やかではないですよね(笑)

桐田:後出しじゃんけんって言われるよなーって思いながら、年末年始はじりじりしながら過ごしていました。

――紅白でも大活躍だったピコ太郎さんご本人が、1月23日の国立劇場の歌舞伎公演に出演されたわけですが、あれはかなり歴史的な?

桐田:歴史的ですね。

――歌舞伎俳優以外の方が国立劇場の歌舞伎公演に出るということが、初めてなんですよね。

桐田:ああいう出方はないですね。「PNSP」の動画があんな風に盛り上がっていって、ピコ太郎さん本人もツイートしてくれて、その後ピコ太郎さんの事務所の方から打診があったんです。どういう形で出ていただこうかということを、歌舞伎の制作担当で調整して、あの形の出演になったんです。今まで菊五郎さんのお芝居では松平健さんの「マツケンサンバ」、EXILEやAKB48も歌舞伎に取り入れてきましたけど、ご本人の出演までにはならなかった。今回もご観劇とその後の取材ぐらいかなと思っていたら、舞台に立つという話にまでなって。

piko-butai▲こちらがピコ太郎さんの出演風景。写真左がご本人。写真右は片岡亀蔵さん。

――すごいですよね。動画公開からちょうど10日ですよね。

桐田:そうですね。10日。

――恐らくこれは前々から仕込んでいたんじゃないかと思われているところも…

桐田:いや、あくまで成り行きです! 自然な盛り上がりで、作ってないからこそ面白いのかも知れません。

――本当にすべてが合致していますよね。誰もが楽しめる歌舞伎公演の内容があって、それを伝えていこうという人がいて、結果それが反響を呼び、そしてご本人も登場と。

桐田:大体年末も慌ただしい12月26日になんとか集まって収録出来たっていうのが、奇跡です(笑)

――すごいですね。

桐田:奇跡が重なっている。奇跡というか偶然が重なっていますね。まず動画が出た時点で結構マスコミに取り上げていただきました。TVや新聞でも。CNNからも電話がかかって来て、どこからかけているのか聞いてみたら香港からだって(笑)いま動画の再生回数が250万ぐらいですよね。

――今日の朝(取材日は2月6日)には250万回を突破していました。実際「PNSP」以降で、国立劇場や伝統芸能の認知度は広がったと思うんですけど、実感としての反響はありますか?

桐田:いいものを作った時には、例えば長唄などを知らなくても、面白いものだって能書き無しで思ってもらえるものなんだなっていうのは感じましたね。いいものを作れば見てくれる。

――これをきっかけに伝統芸能などに興味を持った人たちに、伝統芸能の魅力を改めて伝えるとしたら?

桐田:国立劇場も伝統芸能のイメージもそうかも知れないんですけど、自分の世界とは遠いものだっていう風に思っている若い方が多いかと思います。しかし、江戸時代には歌舞伎は庶民の娯楽だったので、元々面白いものなんです。博物館のガラスケースに入って遠くから見るものじゃなくて、肌で感じて楽しいとか、今回の動画みたいに「これは面白い!」という風に感じさせられるものなんだと思います。是非食わず嫌いにならないで、これをきっかけに色々観て頂けたら。これで終わってしまうと、長唄の人たちも残念に思っちゃうでしょうし。

今回の動画にも長唄の色々なエッセンスや技巧が散りばめられています。長唄の公演を聴きに来て頂けると、出演者にとってもそれが本望だと思いますので、この動画は入門編として、どんどん入ってきてほしいですね。

――ありがとうございます!

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