いとうせいこうさんが語るウルトラマン・映画・下町の魅力とは? 「面白いから来てくださいじゃなくて、みんなで観るから面白いんですよ」 【ウルトラインタビュー】

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アーティストや小説家などさまざまな分野で活躍しているいとうせいこうさん。東京都・葛飾区の下町生まれのいとうさんですが、上野と浅草を舞台にした「したまちコメディ映画祭 in 台東」(略称・したコメ)の総合プロデューサーを務めているのをご存知ですか?

今年第9回目を迎える「したコメ」のみどころや、「ウルトラマン」に登場する怪獣にまつわる鋭い考察など、たっぷりとお話を伺いました!


■ウルトラマンはリアルな存在「アメリカあたりは野が広ぇで」

――いとうさんにとってウルトラマンの思い出とは?

いとうせいこう(以下、いとう):僕の母方のおじいちゃんが長野県に住んでいて、夏休みとかになると必ず帰省してたんですよ。あるとき、おじいちゃんと一緒にテレビで「ウルトラマン」を見てたら、「アメリカあたりは野が広ぇで」って言い出して。

――野が広ぇ??

いとう:そう。野原が広い、と。おじいちゃんがボケ始めてたのは確実なんだけど、「あんなもんがいるかなぁ」って真剣に見てたんですよね。だから、言ってみれば僕はウルトラマンが本当にいると思ってた人の後ろから見てたわけだから、普通の見方じゃないんだよね。僕の記憶では、ウルトラマンが大きい電波塔みたいなのを抜いて投げてたような気がするんだけど、おじいちゃんはそれを見て「いやぁ」って言って感心してたんですね。「アメリカはすげぇ~」と。アメリカだと思いこんでたんだよね。それが僕の一番強烈なウルトラマンの思い出。あとは、「ウルトラQ」のとき、画面が回ってたでしょ。

――「ウルトラQ」のオープニングですね。

いとう:そう、あれで目が回った! 目が回って、遠い世界に行くような感じがして怖かった。後に僕の世代か、僕よりちょっと上の怪獣好きの世代は、(マニアックな種類や系譜などの)分類に行くじゃん? ピグモンだなんだとか。自分は一切そっちには行かなかった。それっておそらく自分の脳みその特殊な構造のせいなんじゃないかな。ピグモンは好きだったけど、みうらじゅんさんとかのあの感じじゃないんだよね。

――いわゆるオタク的な方向には行かなかった、と。

いとう:うん、僕、全然オタクじゃないんだよね。分類じゃないんだよ。後に、(ヒーロースーツは)スーツアクターが着てるってことがわかるんだけど、着てるからシワみたいなのが寄るじゃん。当時はあの質感に異様な感じを受けていて。「なんなんだろう?」っていう。だから僕もさすがおじいちゃんの孫だけあって、むしろリアルに自分の精神世界にウルトラマンを受け入れていたのかもしれない。作りものだとは一切思っていないっていうか。だからディテールに意識が行っていたんじゃないかな。僕はもともとウルトラマンに出てくる怪獣も「リアルに怖い」って感じてたわけだけど、それでいいと思うんだよね。怪獣って、「他者」じゃないですか。何考えてるかわかんないし、形も違うし。

――怪獣はエイリアン(異邦人)というわけですね。

いとう:それが、「なぜ暴れてるのか?」っていうことを推測してウルトラマンは戦うわけでしょ。あるいは、今の時代になれば、段々怪獣と仲良くなるとか、意志の疎通ができるようになるのかもしれない。それって、つまりは外国人だもんね。ホスピタリティがないから、争いが起こっているのかもしれないわけで。「他者」っていうものを前にしたときに、初めて自分のコミュニケーション能力とか、思いやりが問われる。「気持ち悪いから帰ってくれ」っていうのは、やっぱり幼稚な社会なんだよね。

――なるほど。

いとう:当時は戦後まもなくだったと思うけど、怪獣みたいに不思議なものをいっぱい作っていても、誰もそれを「気持ち悪い」とは言わなかった。かつて、そういうものに熱狂した子どもたちがいるってことはすごく大事なことだよね。つまり、それを許した社会があるわけじゃん。でも、それはなぜかって言ったら、その前に日本には妖怪っていう伝統があるからで。妖怪だって、何考えているかわかんない「他者」じゃないですか。大きな傘被っているやつとか、ぬりかべとかさ。社会のなかに、なにか自分たちとは違う価値で動いているものがあるっていう感覚は大事で、それをお祀りするのが「祭り」でしょ。あと鎮めるとか。そういうのと怪獣は、僕の中では確実につながってるんだよね。

――ウルトラマンと祭りというのは、「ウルトラJ」でも取り上げていますが、つながりがあるんですね。

いとう:そうだと思うよ。だから僕はウルトラマンに出てくる怪獣が怖かったんだと思うし、素直に可愛いって言えないんだと思う。だって、変だもんね、よく見ると怪獣って。でも、それをどういう風に受け入れていくのかが大事なんじゃないかな。僕は園芸とか植物が好きだから、いつも考えていることなんだけど。だって、人間と身体つきが全然違うわけじゃない? 花はきれいだけど、根っことか球根とかさ、葉っぱの形も変だしさ。俺とは全然違うわけだから、分かりようもないけど、「これ水やりすぎかな」とかっていうのを常に考えてるんです。それで、上手に推測して水をやることによって、やっぱり花は咲くんですよ。それに近いよね。「他者」に対して「自分」が何をするかって。価値が違うものを前にして、「自分」はどうあるべきか、っていうことなんじゃないですかね。これは。

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