東京国際映画祭のエース・矢田部吉彦さんインタビュー 映画の魅力を伝える仕事と後悔しない生き様とは?

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日本はもちろん、アジアでも最大規模を誇る「第29回東京国際映画祭」が、10月25日(火)~11月3日(木)まで東京・六本木にて開催されます。

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その東京国際映画祭にてプログラミング・ディレクターを務めている矢田部吉彦さんにインタビューを敢行。映画祭という一大イベントについて、映画の魅力を多くの人に伝えるためにどうしたらいいのか――。映画人はもちろん、普段あまり映画を観ない人にもおすすめの映画の観方・楽しみ方を、ウルトラJライターのウインダム山田がお聞きしてきました。

映画に対して人一倍アツい情熱を持つ「東京国際映画祭のエース」の映画愛。たっぷりとお楽しみください!


■「ウルトラマン」直撃世代の思い出と東京国際映画祭の穴場スポット

――今回の取材をご依頼させて頂いたきっかけなのですが、先日までウルトラJでは「したまちコメディ映画祭」の特集をしていました。その宣伝担当の山下さんという若い宣伝マンが映画祭マニアでして、東京国際映画祭(TIFF)はもちろん、夕張など全国各地の映画祭を回っていて、映画祭の魅力について取材させて頂いたんです。その取材中と終わったあとに、いかに東京国際映画祭のコンペティション部門と矢田部さんが素晴らしいか、ということを語ってくれたのがとても印象的だったんです。ウルトラJでも東京国際映画祭の特集を組ませて頂きまして、あらためて矢田部さんにお話をお聞きにまいりました。

矢田部:ありがとうございます。山下さん様さまですね。光栄です。

――さっそくですが、ウルトラJ定番の質問がございまして、「ウルトラマン」との思い出を聞かせて頂いています。矢田部さんはフランス・パリでお生まれになったとのことですが、幼少期の「ウルトラマン」の記憶などはありますか?

矢田部:僕は自分の血の何割かは「ウルトラマン」で出来ているっていうくらいに、完全に世代です! 物心ついたときの記憶だと「ウルトラセブン」の終わりごろで、「帰ってきたウルトラマン」と「ウルトラマンA(エース)」と「ウルトラマンタロウ」の前半に人格形成期をむかえました。ですから超・超・超世代ですね。「ウルトラマンレオ」以降は外国にいたので、そこからは止まっているのですが、日本に帰ってきてから、またむさぼるように再放送を改めて観ました。「ウルトラマン」を中心に4歳~6歳は回っていましたね。

――矢田部さんは1966年生まれということで、「ウルトラマン」と同い年で、完全に「ウルトラマン」直撃世代ですね!

矢田部:完全直撃世代です。「仮面ライダー」も同じ時期に流行っていたんですが、そちらは等身大で怖かったんですよ。ショッカーとかも普通の人間みたいなので。ただ、「ウルトラマン」は熱中してましたね。SFの面白さというのがあったのでしょうね。いまだに歌を聴くとゾクゾクします。この話だけでもかなりイケますね(笑)

――中でも一番好きな作品は?

矢田部:僕は「ウルトラマンA(エース)」が好きなんです。主人公の北斗と南がいるんですけど、(南が)かわいくて。初めて男女の関係を意識するような、ちょっとほろ苦い男女の話じゃないですか。南が途中でいなくなっちゃうんですよね。(月へ)帰ってしまうのですが、それが悲しくて。僕には兄がいるのですが、兄からは(「ウルトラマン」シリーズといえば)「ウルトラセブン」だよって言われてました。後から観て素晴らしいなと思ったんですが、リアルタイムでは「帰ってきたウルトラマン」と「ウルトラマンA(エース)」なんですよ。「帰ってきたウルトラマン」ではべムスターにやられちゃうときがありまして、最終的には勝つのかな。でもやっぱり一番リアルタイムで熱中したのは「ウルトラマンA(エース)」かな。

――やっぱり「ウルトラリング」での変身にあこがれました?

矢田部:2人で一体になるって素晴らしいじゃないですか。何がつらいって、今まで男女で変身していたのに、南が居なくなってしまうので、それまで2人でリングとリングをタッチして変身していたのに、北斗が自分で両手にはめて1人で変身するあの悲しさ。ということで、ウルトラJでお話しできるというのは、とても光栄です。

――ありがとうございます! ずっとこの話をしていたいくらいです!

矢田部:円谷さんっていう偉い人が居て、というのはずっと後になってから、もちろん知るわけですけどね。「ウルトラQ」も当時再放送していたかなぁ。でもやっぱり4歳~6歳の時は本放送を観てて、「ウルトラQ」はもうちょっと後になってから観たのかな。

――「ウルトラQ」だと「ウルトラマン」以降を観た人にとっては、ちょっと毛色が違うところがあったりしますからね。大人向けといいますか。矢田部さんが暮らしていたフランスなどのヨーロッパのほうでも、「ウルトラマン」って知名度があったのですか?

矢田部:僕が居た当時はなかったですね。日本の文化はその頃ヨーロッパに上陸していないです。アニメもなかったです。日本のアニメ文化がフランスやヨーロッパに行くのは、もっと後ですね。「マジンガーZ」とか「キャンディ・キャンディ」が日本で始まったのが1970年代くらいだと思うので、僕が居た時はまだでしたね。日本から送られてくる雑誌とか手紙で内容を知っていました。

――手紙ですか!

矢田部:いま「ウルトラマンタロウ」がこういうことになっているっていうのを、誰だったか…

――日本にいる友だちや親族の方から?

矢田部:いとこだったかな。手紙に書いて知らせてくれたとか、なんていう時代でしょうね(笑)

――いまはすぐ伝わりますからね。いまでこそフランスでは、日本のアニメやマンガが盛り上がっていますよね。

矢田部:その前の時期でしたね。

――いまは「ウルトラマン」も世界的ですよね。たとえば東京国際映画祭でも、おととしの第27回に審査員でいらしたジェームズ・ガン監督がすごく「ウルトラマン」が好きで好きでと。

矢田部:らしいですね。

――ジェームズ・ガン監督は、黒澤明と並ぶくらい「ウルトラマン」が作品として日本を代表するものだと語っていましたね。というところで、改めて東京国際映画祭がどういう映画祭なのかと、矢田部さんのお仕事であるプログラミング・ディレクターというお仕事が、どのようなものなのかについてお聞かせください。

矢田部:映画祭というのは、ある一定期間にたくさんの映画を一挙に上映するという、映画のお祭りです。たとえばロックフェスで1日会場にいると、次から次へといろいろなバンドが出てきて演奏するのと同じように、1日映画祭の会場にいれば、ありとあらゆる映画がやっているよ、というイベントですね。国外では、「カンヌ国際映画祭」や「ベネチア国際映画祭」などがとても有名ですけれど、日本には東京国際映画祭という大きな映画祭があります。世界中の作品、日本の新作と旧作、クラシックな作品もありますし、古今東西の映画がここに来ると観られるという場ですね。普通の映画館に映画を観に行くのと大きく違うのは、監督とか俳優さんが来場して、映画の上映前や上映後に出てきて、映画を紹介したり場合によってはお客さんの質問に答えたり、サインがもらえたりするかもしれない。そういうライブ感がある映画体験というのが、映画祭の大きな特徴だと思います。

もう1つは、世界では本当にたくさんたくさん映画が作られているけれども、映画館にかかる映画だけが映画ではなくて、日本で公開されるものってほんの一握りなんです。公開されない作品の中にも、とてもいい作品はたくさんあるので、そういった作品が多く映画祭でかかります。映画祭で見逃すと一生見られないかもしれない作品も多く上映されるので、そういう意味ではとても貴重な機会ですね。とてもコアな映画ファンから、普段はあまり映画を観ない人まで、誰でも必ず好きな映画に出会える、そういう場が映画祭です。そこで何を上映するか選んでいる人がいまして、僕は東京国際映画祭で、上映する作品を選ぶのが仕事です。いつも200本くらいの映画を上映するのですが、ただ並べても分かりにくいので、いくつかの部門に区切っているんです。その中の1つ、メインになる部門にコンペティション部門というものがありまして、そこでは世界中から作品を集めて全16本で賞を競わせるんですけれども、映画祭の1つの核です。そのコンペティション部門の作品を選定するのが、僕のメインの仕事の1つです。

――ありがとうございます。僕も「したまちコメディ映画祭」で初めて映画祭に行ったんですが、フェスみたいなところがあるなと思いました。さっきまで浅草公会堂で壇上にいた浅香光代さんが、浅草のオレンジ通りを普通に歩いていたりとかもしましたね。東京国際映画祭の場合は、それこそ世界中から監督や俳優や関係者の方が来ると思うのですが、普通に一般の人が入れる場所で出会えたりするのですか?

矢田部:本当にイチバン知ってもらいたいのは、まずは普通に映画館に行くのと同じようにチケットを買えば、だれでも見られるイベントだということです。場合によっては普通の映画館よりも安い場合があって、よりお手軽に観られます。かつ、会場内を歩いていれば、隣に普通に映画人がいますので、勇気出してサインくださいって言うも良し、話しかけても良いと思います。あと意外に良いのが、スモーカーですね。

――スモーカー?

矢田部:割と海外の映画人ってタバコを吸う人が多いので、会場内の喫煙所でタバコを吸っているとですね、割といるんですよ。そういうときは話しかけやすいですよ。「いま映画を観たんですけど、よかったですよ」っていうと喜んでもらえたりして。これかなり穴場です。

――喫煙所コミュニケーションのもっともグローバルな形ですね。たとえば向こうがマルボロを吸っていようものなら、これは日本のタバコですみたいな国際交流も。

矢田部:いいですね!

――「俺あの監督にタバコあげたぜ!」みたいな。

矢田部:向こうもこっちもリラックスしてますからね。さらに共犯意識もありますからね(笑)

――ちょっと英語が分かれば、新作の話とかも、もしかしたら聞けちゃうかもしれない。昔は映画館でタバコ吸いながら観ているような時代もありましたからね。

矢田部:けっこう昔ですけどね。本国では大物だけど、日本ではそれほど知られていないという映画人も多いので、ちょっと話しかけてみて、あとから調べてみたらめちゃ大物だった、ってこともあるので(笑)

――きさくな外人のおっちゃんだと思ったら、アカデミー賞取ってるぞみたいな(笑) タバコを吸われる方は、そこで貴重な体験ができるかもしれませんね。

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