「生きるということに涙があふれてくる作品です」 のんさん主演のアニメーション映画「この世界の片隅に」

このエントリーをはてなブックマークに追加

CIMG7438_s
■スクリーンの向こうに描かれる71年前の広島。その世界で生きている人々を描いたアニメーション映画とは?

11月12日(土)に公開予定のアニメーション映画「この世界の片隅に」のワールド・プレミア上映が、「第29回東京国際映画祭」にて10月28日(金)に行われました。上映後の舞台挨拶には、主演声優を務めたのんさんと、片渕須直監督が登壇。本作への想いを語られました。

CIMG7331_s

この時代に、戦時中の広島県・呉を描いた本作を映画にしようと思った理由を問われた片渕監督。

「(本作の主人公)すずさんはお嫁に来た時に18歳なのですが、僕は彼女はこの世界のどこかの片隅で十分健在だと思います。そうだとしたら、今91歳です。自分の両親も戦時中は子どもでしたが、この時代のことを知っている人がもう多くなくなってしまったのが大変残念です。単純に想像するのではなく、この時代はこんな時代だったのだということに確かな手ごたえを感じたくて、この映画を作りました。自分たちの両親がどんな時代を生きていたのか知ることによって、やっと大人になれるのだと思います。そんな気持ちで作りました」と回答。

のんさんは、こうの史代さんによる原作マンガを初めて読んだ時の印象を聞かれ、「今まで戦時下の時代は、自分たちのいるところとは違う世界だという漠然とした感覚がありました。そうではなくて、日常と隣り合わせて戦争があって、そんな中ですずさんが一生懸命暮らしている姿が、素敵で素晴らしい作品だと思いました」と、言葉を紡ぎました。

さらに片渕監督は、全編広島・呉弁で描かれる本作の声優陣に対してコメントし、のんさんの演技は「もっともナチュラルに存在しているすずさんを演じられていて、誇らしいです」と絶賛。演じる上でのんさんは、「あからさまに戦争というものに嫌悪感を示している人ではないと思っていて、それよりも目の前にある暮らしを一生懸命に生きる、という部分を意識しました」と答えていました。

CIMG7383_s

観客からの映画の注目してほしいポイントについて質問を受け、戦争中を描いた作品は数多くあるが、「本当のところはどうだったのだろうか?」というところにこだわって制作したという片渕監督。「当時実際にあった家々も可能な限り再現し、映画の中で1つの世界を作り上げることで、現代と陸続きであるということを感じたかった。そしてすずさんが本当に存在しているという実感を観て頂きたい」とコメント。

のんさんは作中で一番気に入っている台詞について、「(アメリカの飛行機が落としたビラを再利用するシーンで)『工夫し続けることがうちらの戦いですけん』っていう台詞が響きました」と回答されました。

CIMG7408_s

全14か国での公開も決まっている本作。片渕監督は、前作「マイマイ新子と千年の魔法」をアメリカで上映した際、観客から「次はどんな映画を作ろうとしていますか?」という質問を受けたエピソードを話します。

「1945年の広島が舞台ですと答えた瞬間、その場にいた多くの人が息を飲んだのを覚えています。当時の戦争や原爆のことは、日本以外の外国の人にとっても、人類史的な悲劇となっているのではないか。まだ知識の段階かもしれないですが、そこにどんな人々が生きていたのか、この映画を通じて感じ取ってもらえればいいかなと思っています」と観客へ想いを語ります。

これから作品を観る人に対して、「この映画は当時どんな空気でどんな気持ちだったのかということを、自分たちが信じられるように描こうと思いました。映画を観ることでタイムマシーンで当時に行けるような気持になるのではないかと思います。その先に、のんさんが声を貸したすずさんという人がいます。すずさんが毎日どのように暮らしていたかを覗いて、また帰って来てください」と片渕監督。

「普通がすごくいとおしくなる作品だと思います。生きるということに涙があふれてくる作品で、その涙は悲しいものではなくて、何があっても生活を続けるということの力強さに心が震える映画だと思います」と、のんさんが答え、舞台挨拶は終了しました。

映画の中で生きているすずさんと同様に、のんさんからも生きているということの尊さや儚さ、そして力強さを感じることが出来ました。この世界の片隅で生きているということを実感できる、珠玉のアニメーション映画です。ぜひ劇場で71年前の広島に、タイムスリップしてみてください。

原作:こうの史代(「この世界の片隅に」双葉社刊)
監督・脚本:片渕須直
キャスト:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、牛山茂、新谷真弓/澁谷天外(特別出演)
音楽:コトリンゴ
キャラクターデザイン:松原秀典
プロデューサー:丸山正雄・真木太郎
アニメーション制作 MAPPA/プロデュース GENCO
後援:呉市・広島市
11月12日(土)より、テアトル新宿、ユーロスペース他全国にて公開!
公式サイトはこちら

null
第29回東京国際映画祭公式サイトはこちら
開催期間:2016年10月25日(火)~ 11月3日(木・祝)
開催会場:六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) ほか 都内の各劇場および施設・ホールを使用

映画祭の魅力や楽しみ方はこちらの記事をご参考ください。

(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

前の記事へ

【3分でわかるニッポンの伝統工芸】東京・東京銀器

【3分でわかるニッポンの伝統工芸】東京・東京銀器

次の記事へ

歌舞伎座で古舘伊知郎さんが喋り倒す! 「同時通訳なんてできる訳ないですから、とにかく喋りまくって、脱線もします」

歌舞伎座で古舘伊知郎さんが喋り倒す! 「同時通訳なんてできる訳ないですから、とにかく喋りまくって、脱線もします」

関連記事RELATED ARTICLE

東京国際映画祭開幕! 安倍首相や黒木華さんが登場した豪華レッドカーペットをレポート

岡山県で描かれる映画に斎藤工さんと高梨臨さんが出演 明かされた赤磐市での撮影秘話とは?

東京国際映画祭のエース・矢田部吉彦さんインタビュー 映画の魅力を伝える仕事と後悔しない生き様とは?

東京国際映画祭ならではの素敵な光景 アジアでともに生きる人々を描いた映画とは?

映画を通じてアジアの文化を受け入れる大切さ 行定勲監督も参加する映画プロジェクトとは?

日本を含むアジア3国で作られたオムニバス映画 映し出された共通点とは?

東京タワーと一緒に映画を楽しむ! 開放感いっぱいの野外上映会に行ってみた

【打ち上げ花火、家で観るか?外で観るか?】六本木ヒルズで岩井俊二作品など無料野外上映が実施

岩井俊二監督が映し出す世界 最新作「リップヴァンウィンクルの花嫁」で描かれる日本の今とは?

キーワードKEY WORD