【特撮ファン永久保存版】中野昭慶特技監督が語る「キングコング対ゴジラ」 円谷英二特技監督の特撮へのこだわりとは?

このエントリーをはてなブックマークに追加

CIMG8287_s
■「爆破の中野」が明かす円谷英二特技監督のこだわりとは? 54年ぶりに復活した「キンゴジ」トークをたっぷりとお届け!

こちらの記事でお伝えした「キングコング対ゴジラ [4Kデジタルリマスター版]」(通称・キンゴジ)の上映が、「第29回東京国際映画祭」にて11月1日(火)に行われました。上映後に行われたトークショーには、本作にも参加されている、特技監督の中野昭慶さん、映画評論家の町山智浩さんがゲストとして参加し、フジテレビの笠井信輔アナウンサーが司会を務めました。「ゴジラ」ファン必見の制作秘話が次々に飛び出したトークショーの模様を、本記事ではたっぷりとお届けします(ネタバレの要素を含みますので、作品をご覧になってからお読みください)。

■54年前の制作のきっかけと、今だから話せる「キンゴジ」制作秘話

CIMG8201_s
▲中野昭慶(なかのてるよし)特技監督。

笠井:ひと言ずつご挨拶頂きたいと思います。まずは、もはやレジェンドと言っていい中野昭慶特技監督です!

中野:我々映画の作り手というのはですね、たった1回しか素晴らしい映画を観ることができません。それはどういうことかと言うと、つまり完成試写、我々はゼロ号と呼ぶんですけど、その時に初めて全体の綺麗な映像を観るわけなんですね。その感激っていうのは、物凄いものがあるんですけど、僕は今回このリマスター版を観て、50年前の感激を味わうことができました。

町山:僕は1962年生まれで、この映画と同い年なんですね。生まれて初めて劇場で観た怪獣映画が、東宝チャンピオンまつりの(本作の)短縮版だったんですよ。その時にすでに60分くらいにカットされてまして、残りのフィルムがずっとどこかに行っていたんですね。それが初上映から54年ぶりに初めて修復されて、非常に感慨深いです。

笠井:本作を初めて劇場でご覧になった方は手を挙げてください。いやぁ、ほとんどですよ! だから感動していると思うんですよ。すごい綺麗でしたよね。

中野:本当にそうですね。作ったときのまんまというか。作り立てのホヤホヤを先ほど申し上げた通りゼロ号試写で観るんですが、フィルムの世界っていうのは、日が経つにつれてどんどん劣化していくんですね。汚れが目立ち、スクリーンに雨が降ると言うのですが、つまり傷だらけになる。我々の手を離れたとたんに劣化していって悲しい運命を辿るということが実はあるんです。

笠井:リマスターによって、すべての劇場で上映できるようになったわけですよね。

町山:はい。昔修復したバージョンがLDで出たことがありまして、それは16mmか何かのポジフィルムを発見して、それを無理やりつないだ物凄い画質の悪い傷だらけのものだったんですよ。こんなに綺麗なものが劇場で観れるなんて夢のようですね。

笠井:そこでですね、中野さんは54年前の本作に制作スタッフとして参加されていたということなんですが、お立場は?

中野:助監督です。当時助監督の1年生でした。この前にいろいろ苦労した結果なのか、円谷さんに「ぜひ来てくれ」ということでついた作品ですね。

笠井:「ゴジラ」としては、当時「ゴジラの逆襲」から7年ぶりに復活してキングコングと戦うということで、スタッフの皆さんのムードはどうでした?

中野:「ゴジラ」っていうのは、ご存知の通り最初の第1作があって、そのあと「ゴジラの逆襲」っていうのが出るんですが、これがどういうわけか、あまり成績がよくないということで、それ以降ずっと作られずに来たわけです。スタッフにしてみれば、一生懸命やった結果なので何とかやりたいと皆が思っていたときに、この話が舞い上がったっていうことで。スタッフ全員頑張ったのが本作だと思いますね。

笠井:そもそもアメリカから企画が流れてきたんですよね?

町山:もともと「キング・コング」(1933年版)を最初に作ったウィリス・オブライエンというオリジナルの人が企画していたものなんですよ。それは人造人間とキングコングが戦うという「キングコング対プロメテウス」という企画だったのですが、製作費等集まらなくて企画だけが流れ流れていって、東宝に行ったんですよ。そこから「フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)」とかも同じ企画書から派生してくるんですよ。

笠井:そうなんですか。

町山:これは最初から全世界公開の予定ですよね?

中野:そうです。これは東宝の森岩雄さんが世界に売れる映画を作りたいという念願があって、そこにキングコングという絶好のスターが来て。

笠井:このキングコング戦から、ゴジラ対何とかっていう、いわゆる戦いの構図の「ゴジラ」シリーズが確立したと言っていいわけですね。

中野:これはまさに脚本の関沢(新一)さんの功績だと思いますね。

笠井:なんで、「ゴジラ対キングコング」じゃないのでしょうか? 日韓戦と韓日戦じゃやっぱり日韓戦なんですよね。

町山:キングコングのギャラがたしか当時莫大な金額だったんですよね?

中野:という話を聞いてますけど、その辺のことはあまりよく知らないんです。

町山:一応その当時は、ベビーフェイスというか善玉のほうが名前が頭の方に来て、「モスラ対ゴジラ」や「キングコング対ゴジラ」ってなってるんですよ。

笠井:やっぱりそういう感じなんですね。日米決戦ですから、絶対に負けられない戦いという中で、これは最初はゴジラが勝つストーリーだったと聞いたことあるんですけど。

中野:はいはい、そうです。

笠井:(本編では)痛み分けみたいな結果になっていますけど。

中野:これはきっとね、このあと続くといいねという制作陣の思い入れがあったと思うんですが、、それがこめられたラストシーンなんですね。だから結末はあえて出さなかったという。それで実はこのパターンが以降最近の作品まで続くという結果になるんですけどね。

笠井:日本人としては、きっとゴジラが勝ってくれるんだろうなって思ったかなと。

町山:これゴジラ勝ったら日本壊滅しますからね(笑)

笠井:確かにね(笑) ゴジラの中に入っていた中島春雄さんは「ゴジラが勝っている」ってインタビューに答えていて、なぜならば「落ちた瞬間、俺が上だったから」って(笑)

町山:あの人いつもそうで、「モスラ対ゴジラ」のときもそうですよね。モスラって電車みたいにして何人もの人が動いているんですけど、モスラの中では何人かのうちの1人でしたねって言うとですね、「いや、俺は先頭だったから」って。だから何と思いますけど(笑)

笠井:スーツアクターとしてのプライドがあるのでしょうけれど、このキングコングのほうには、広瀬正一さんっていう方が初めて入られたと。なかなかお上手でしたけど?

中野:これは広瀬正一という東宝の大部屋俳優さんなんですけどね。このとき実は、中島春雄さん…中島はるちゃんがキングコングをやる予定だったんです。それでスタートしたんですけど、どうも動きがゴジラなんですね。それで円谷さん以下スタッフ悩んじゃいましてね。この際入れ替わってもらおうということで、ゴジラに入る予定だった…

笠井:広瀬さん?

中野:通称・ソロモンって言うんですけどね。

町山:ソロモン諸島からキングコング来ますからね。

中野:その辺が語呂合わせになったかどうかは別にして、ということで入れ替わったんです。

笠井:(広瀬さんは)普段から猿っぽかったという伝説がありましたけど?

中野:そう言われてみれば、それは僕の口から言うのはアレだけども…とにかく朝挨拶したら、猿っぽかった。

笠井:(笑) 町山さんは「キンゴジ」のどこが好きですか?

町山:僕はとにかく、最初に劇場で観た怪獣映画なんですけども、コメディってとこですかね。

笠井:あっ、そう!

町山:それと、大企業が宣伝のために怪獣を日本で戦争させるっていう。それ法律とかどうなってるんだと思いますけど、そのアイデアは凄いなと思いますね。

笠井:確かにTVが2~3年前に一斉に放送を始めて、まだ黎明期の頃にもう視聴率だ広告だっていうことがかなりしっかりと盛り込まれてまして、何といっても有島一郎さんですよね。

町山:多胡部長!

笠井:キングコング対ゴジラ対有島一郎みたいな(笑) そういう映画になってますよね。

中野:喜劇ということを理解している人なんですよね。だからそれが全編に出ていた。

笠井:皆さんも僕も劇場で初めて観て、僕は町山さんより1つ年下なのですが、けっこう笑って観ているんですね。有島さんはわかるけど、キングコングのところでけっこう笑いが起きてて、この映画ってここで皆で観てると笑えるんだっていうのが発見でした。

中野:それは海外でもそうだったらしいです。

笠井:そうですか。なんかフワフワしてるんですよ、キングコング(笑) 僕ちょっと凄く疑問があって、キングコングが最初にゴジラと戦ったときには、手が凄く長いんですよ。でも東京に上陸すると、短くなってるんですよ。あれはどういうことなのでしょうか?

中野:これね、あんまりその辺突っつかないでほしい(笑)

笠井:54年経ったからいいじゃないですか(笑)大きなスクリーンで観ると余計気になるわけですよ!

中野:あれはね、ロング(ショット)は長い手で行こうと。あとは寄りになってクローズアップになった時には、素手の方が動きやすいと。ということで、人間サイズの短さになるわけですね。

笠井:はぁー……。

中野:これをねぇ、取り換えるタイミングが、どこで変えようか。「ここじゃマズイだろ」「そうかぁ」なんて言いながら最後までどれがよかったかっていうのは分からず終いっていうのが、スタッフの本音なんです。

笠井:そうですか。私の本音は、どこで変えてもマズイだろうという(笑) でも町山さん、長い手はいいですよね。

町山:あれはマジックハンドみたいになってるんですか?

中野:まあ、そうですね。つまり手元で握れば…

町山:ワイヤーが中でつながってて。

中野:あれはいいんですけど、横棒を持ってるんでなかなかね。上下の場合は動いちゃうんですよ。だから殴るアクションの場合は手が逆に反っちゃうんですね。

笠井:あぁー。

中野:「あぁ、失敗だ!」という。じゃあどうしようかっていうと、中島はるちゃんと2人で協議の結果、殴るのを少し斜めに持っていこうと。そのまま殴っちゃうと曲がっちゃうんだけど、これを斜めに持っていくことによって、「その時俺が受けるから、お前ひっくり返れ」みたいな打ち合わせをやりながら撮影したのを思い出しますね。

笠井:そうですか。あとキングコングの質感・毛がかなりリアルな感じだったんですけど。

中野:あれは本当の毛皮じゃないんですけど、サボテンの表面っていうんですかね、表面についている毛を利用して。

町山:あっ、そうなんですか! へぇー。

中野:身体に直接生えているのは完全にナイロン製のものです。

笠井:そうなっているんですね。

次ページ:ゴジラでもキングコングでもない、円谷英二特技監督のこだわりとは? 

前の記事へ

【3分でわかるニッポンの伝統工芸】福島・会津本郷焼

【3分でわかるニッポンの伝統工芸】福島・会津本郷焼

次の記事へ

【1986年のウルトラマンといえば?】『ウルトラマンキッズのことわざ物語』が放送 50年の歴史を振り返る・その21

【1986年のウルトラマンといえば?】『ウルトラマンキッズのことわざ物語』が放送 50年の歴史を振り返る・その21

関連記事RELATED ARTICLE

【シン・日米怪獣王対決】あの「キンゴジ」が色鮮やかに蘇る! 中野昭慶特技監督と町山智浩さんのトークショー付きで11/1上映

東京国際映画祭のエース・矢田部吉彦さんインタビュー 映画の魅力を伝える仕事と後悔しない生き様とは?

「生きるということに涙があふれてくる作品です」 のんさん主演のアニメーション映画「この世界の片隅に」

東京国際映画祭開幕! 安倍首相や黒木華さんが登場した豪華レッドカーペットをレポート

岡山県で描かれる映画に斎藤工さんと高梨臨さんが出演 明かされた赤磐市での撮影秘話とは?

東京国際映画祭ならではの素敵な光景 アジアでともに生きる人々を描いた映画とは?

映画を通じてアジアの文化を受け入れる大切さ 行定勲監督も参加する映画プロジェクトとは?

東京タワーと一緒に映画を楽しむ! 開放感いっぱいの野外上映会に行ってみた

歌舞伎座で古舘伊知郎さんが喋り倒す! 「同時通訳なんてできる訳ないですから、とにかく喋りまくって、脱線もします」

キーワードKEY WORD