【ウルトラJ文楽入門特集・その4】竹本千歳太夫さんと豊澤富助さんに訊く! 実演動画で太夫と三味線による義太夫節を聴いてみよう! 

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「ウルトラJ」の文楽特集3回目では、語り手である太夫の竹本千歳太夫さんと三味線演奏者の豊澤富助さんをお迎えし、貴重な楽器などを見せていただきながら、「太夫(たゆう)」と「三味線」の基礎知識と、文楽の楽しみ方について教えていだきました。特集4回目では、なんとウルトラJの読者に向けて、特別に実演をして頂きました!

雪が降り積もっている静かな描写にご注目。映像とあわせて、太夫&三味線と文楽の楽しみ方の続きをご覧ください!

――太夫と三味線では、どれくらいの修行期間が必要なのでしょうか。

千歳太夫:義太夫節としてちゃんと聞こえるようになるまでに、だいたい10年が1つの目安になるとは思いますね。「笑い3年、泣き8年」という言葉があるんですけど、それだけやればできるというものでもないですからね。昔はね、8つとか9つとか、小さいうちからお稽古を始めるわけですよ。いまはもう17歳とか18歳からですからね、スタート時点で既に10年違うわけです。10年やってもダメな人はダメですし、5年で芽が出る人もいて、先輩の中に目をかけてくれる方がいます。

富助:箏曲家(そうきょくか)には申し訳ないんですけどね、昔から「三味線3年、琴3日」って言うんです。調絃ができるまでに3年かかると言われていて、1人で舞台に上がって弾くまでには、やっぱり10年以上はかかるでしょうね。太夫と三味線は1人ずつ舞台に放り出されますから大変ですね。たとえ10分でも20分でも、ひとりきりで責任を持ってやらなければいけないんです。

千歳太夫:ただ、太夫の場合も、三味線さんが先輩だと引っ張ってもらえることもありますね。

富助:三味線もそうですよ。太夫さんがかなり先輩だと、もうそこでしか鳴らせないっていうタイミングできっちりやっていただけるんです。だから僕らもそうだったんですけど、ベテランとペアになったほうが学べますね。両方が同じくらいのレベルだと、なかなか難しいかもしれない。

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▲取材時でも息のあったテンポでお話しされているのが印象的だったお二人!!

千歳太夫:本人の努力はもちろん、指導していただく方のお陰というのも大きいですね。

富助:そう、師匠・先輩方のお陰、そして指導された芸以外のことを間近で見たり聴いたりして盗み取ることが大切です。太夫も三味線もお稽古の量はかなり多いですよ。太夫のイントネーションが違ったり、三味線の音の高さが違ったりすると、人形が遣えないですからね。聞いて覚えることだけじゃなく、教えてもらうこともかなり多いです。

――具体的に、お稽古はどのように進められるのでしょうか。

富助:太夫・三味線そろってします。細かいところは三味線の先輩が引っ張っていくことが多いですね。逆に太夫さんが先輩だと、「そう弾かれたら言えないわ」とか、言われたりしながら。入門した最初の頃は、叩きで稽古するっていうんですが、拍子を取ってくれる太夫の師匠さんが、本の読み方からはじめて「声出し」でイントネーションのコーチをしてくれるんです。

千歳太夫:太夫の稽古はじめは、まずは息継ぎの仕方とか、大阪弁のイントネーションから学びますね。あとは発声も大事です。

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▲間近で見てみると、意外と大きい三味線。

富助:三味線の場合は「腕固め」といって、指で一か所だけ糸を押さえたまま、「タタタッ、タタタッ」と1時間くらいずっと同じ音を引く練習をするんです。「腕固め」ができたら、調弦です。義太夫の三味線はまずは腕を鍛えて筋肉をつけないと、音が全然出せないし、表現力も身に付きません。

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▲象牙でできた「撥(ばち)」。持たせて頂くと重みがあり、力強く握ると小指が痛くなります。
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▲小指には、「まめ」ができるほど……!

千歳太夫:声もそうですよ。出し続けないと出ませんからね。でも、枯れてくるとそこで先輩からストップがかかってしまいます。声が出ないと、お稽古も出来ないんです。

――文楽の世界って、想像していた以上に体育会系なんですね!

千歳太夫:もはや‟邦楽アスリート”といっても過言ではないですからね。ウルトラマンがうらやましいです(笑)

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▲富助さんの腕にはかなりの筋肉が! 三味線を弾くパワーはここから生まれるのですね。

――最後に、文楽鑑賞の初心者に向けて、アドバイスを一言いただけますでしょうか。

富助:以前、ドイツのレーゲンスブルクというところで義太夫節を字幕付きで上演したことがあるんですが、言葉が通じなくてもみんなすごくいいねと言ってくれました。ただ、ひとつお願いしたいのは、少しでもいいのでストーリーを頭に入れてから観に来ていただきたい、ということなんです。僕らだって何にも知らずに観に行ったら、すごいなとは思うかもしれないけど、きっと面白くはないんですよ。ウルトラマンが「M78星雲」から来たみたいに多少なりとも知識があって、設定さえわかっていれば、「あ、ここがあのシーンか!」って楽しめるはずなんです。この頃はネットであらすじも載っていますからね。

千歳太夫:義太夫節は特殊な発声法だから、聴き慣れないと変な感じがすると思います。江戸時代の言葉ですから全部を理解するのは難しいですけれど、基本的には「シュワッチ!」と同じですから、ぜひとも先入観を取っ払って観に来ていただきたいですね。

――貴重なお話をありがとうございました! 

文楽入門特集はこれにて終了! 文楽が観たくなった方は、2017年2月より国立劇場の公演が始まるので、下記のサイトをチェックしてみてくださいね。

■「文楽」を実際に国立劇場で観てみよう!

2016年に開場50周年を迎えたニッポンの伝統芸能の一大拠点「国立劇場」。2017年2月4日(土)から2017年2月20日(月)の期間にて、2月文楽公演「近松名作集」が50周年記念公演の1つとして上演されます。ウルトラJでも公演情報など取り上げていく予定なので、文楽入門特集と合わせてぜひ実際の舞台をご覧になってみてくださいね!

千歳太夫さんと富助さんは第3部『冥途の飛脚』の「封印切の段」を勤めます。チケットは2017年1月7日(土)より、電話・インターネットで予約開始です。詳細は下記記念サイトをご確認ください。

国立劇場開場50周年記念サイトはこちら

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ピグモン風子

日本古来の伝統文化から最先端のアート・カルチャーまで、ウルトラな人たちを追いかけまわす好奇心旺盛なライター。

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