【ウルトラマンと沖縄のゆかり】第1回「南風原町が生んだ異色の脚本家・金城哲夫」

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■「ウルトラマンの生みの親」

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▲金城哲夫氏の仕事場。現在は「金城哲夫資料館」となっている。

「ウルトラマン」の世界を作り上げた沖縄出身の脚本家・金城哲夫氏をご存知でしょうか?

金城哲夫氏は、沖縄県南風原(はえばる)町出身。母親のすすめで、高校から東京の玉川学園に進学。1954(昭和29)年、終戦から9年、まだ沖縄はアメリカ統治下の時代でしたので、パスポートを持っての上京でした。

大学を卒業後、『ゴジラ』シリーズの特技監督であり“特撮の神様“として知られる円谷英二氏と出会い、円谷プロに入社。1966(昭和41)年1月、メインライターとして空想特撮シリーズ『ウルトラQ』を世に送り出します。同作は、それまで映画でしか見られなかった怪獣がテレビで毎週観られるということで、たちまち子どもたちの人気を博しました。同年7月には正義のヒーローが怪獣や宇宙人と対決する『ウルトラマン』を送り出し、さらに翌年1967(昭和42)年には、侵略宇宙人と対決する『ウルトラセブン』が放送され、怪獣ブームはさらに加熱していきました。

■金城作品が投げかける問いかけとは?

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▲『ウルトラセブン』第42話「ノンマルトの使者」より

金城氏は、20代の若さでこれらの作品に携わりました。メインライターとしての執筆だけでなく、企画立案から設定、ほかの脚本家の統括を一手に担い、その後50年続く『ウルトラマン』シリーズの礎を築いたのです。まさに「ウルトラマンの生みの親」の一人と言えるでしょう。

彼の書く脚本は子どもから大人までを夢中にするエンタテインメントでありながら、観終わった後に考えさせられる深いテーマを含んでいました。少女に「なんでも、かんでも怪獣呼ばわりして殺してしまう。恐ろしい人たち」と「科学特捜隊」を非難させる『ウルトラマン』第30話「まぼろしの雪山」。メフィラス星人が「地球をあなたにあげましょう」と少年に誓わせようと迫る第33話「禁じられた言葉」。

彼が手がけた脚本には「悪い怪獣や宇宙人を正義の味方のウルトラマンがやっつける」という単純な「勧善懲悪」にとどまらず、怪獣にも生きる理由があり、ウルトラマンも怪獣の退治屋ではない、という深い思想が見られ、後のシリーズにも多大な影響を及ぼしました。 “地球先住民”ノンマルトを人類が殲滅し、セブンも心ならずも加担してしまう『ウルトラセブン』第42話「ノンマルトの使者」。体力の衰えたモロボシ・ダンが、アンヌ隊員の静止を振り切り、残りの力を振り絞って最後の戦いに挑む第48話・第49話「史上最大の侵略」(前後編)。

『ウルトラセブン』では、地球人と侵略宇宙人との間で葛藤する、自らも異星人であるヒーローの姿を描いたことで、さらに深く、奥行きのある物語となりました。それと言うのも、米軍統治下の沖縄で幼少期を過ごし、多感な青春時代を東京で過ごした金城氏が抱いていた「日本本土と沖縄の架け橋になりたい」という志が根底にあるのかも知れません。あくまでエンタテインメントに徹しながら書かれた脚本であっても、その中には金城氏自身の日本本土と沖縄の間で揺れ動く彼自身の心境がおのずとにじみ出ているとも言えるのではないでしょうか。

■金城哲夫を超える才能とは!?

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金城哲夫氏は、その後、故郷のために力を尽くしたいと沖縄に戻り、沖縄芝居の脚本、沖縄でのテレビ・ラジオのパーソナリティ、沖縄海洋博(1972年)の開会式・閉会式の演出などで活躍しましたが、1976(昭和51)年、37歳の若さで早世します。ですが、彼が創ったウルトラマンシリーズの作品の中には、今もその志や思想が息づいています。

そして、『ウルトラマン』放送開始50年、金城哲夫氏没後40年の昨年、金城哲夫氏の功績を改めて讃えるとともに、未来を託すことができる新たな才能を発掘・育成するための脚本賞「金城哲夫賞」(主催:円谷プロ)が募集され615作の応募作が寄せられました。同賞は、金城氏の命日である2月26日(日)に受賞者が発表されました。

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出典:http://m-78.jp/TCA/

また、南風原町観光協会が主催する沖縄を題材としたセリフ劇の脚本を募集する「金城哲夫のふるさと 沖縄・南風原町脚本賞」も同時開催され、ウルトラマンシリーズと沖縄は、今なお深いつながりを持っています。

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出典:http://www.haebaru-kankou.jp/kinjo-kyakuhon.html

『ウルトラセブン』放送開始50年を迎えた今年、改めて、ウルトラマンシリーズと沖縄との関係を紐解いていきたいと思います。

プロフィールPROFILE

山科清春

ライター・漫画原作者・編集者。「月刊ヒーローズ」にて『ブースカプラス』
『ドラゴンエフェクト』のシナリオを担当。
アイヌの歌人・違星北斗の研究をしている「違星北斗研究会」代表。
(http://www.iboshihokuto.com)

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