切通理作さん新刊刊行記念インタビュー! あらゆる年代で楽しめる「ウルトラマン」の凄さと、大傑作エピソード「少年宇宙人」を語る

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12月10日(土)に洋泉社より「怪獣少年の〈復讐〉 ~70年代怪獣ブームの光と影」を上梓された、評論家の切通理作(きりどおし りさく)さん。宝島社1993年刊行の「怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち」(洋泉社より2015年増補新装版刊行)、二見書房より2015年刊行の「少年宇宙人 〜平成ウルトラマン監督・原田昌樹と映像の職人たち〜」などで、さまざまな特撮作品や映画・文化批評をされてきました。

ウルトラJでは、新刊の発売記念と、「ウルトラマン」が50周年を迎えただけでなく「シン・ゴジラ」の大ヒットなど、特撮全体が大いに盛り上がった2016年の忘年会も合わせて、切通さんいきつけの中央線のお店でインタビューを敢行! 洋泉社の今井編集も交えて、ライターのウインダム山田と3人で、新刊にまつわる1970年代の特撮事情や1990年代の平成「ウルトラマン」3部作にまつわるアツイ特撮ファントークをしてきましたので、たっぷりとお楽しみください!

※写真撮影:SHINさん

■切通さんの新刊「怪獣少年の〈復讐〉」が迫る、1970年代の特撮事情とは?

今井:切通さんの洋泉社から出ている本としては、「本多猪四郎 無冠の巨匠」「怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち 増補新装版」に続いての第3弾となりますけど、今回はどういった特撮作品をメインに扱っているんですか?

切通:僕が子どもの時には、ゴジラは正義の味方だったんですよ。「東宝チャンピオンまつり」っていうので、ヘドラとかガイガンとか、そういう怪獣と戦っていて。

今井:悪の怪獣がいて。

切通:親とか学校の先生にゴジラって昔は悪かった、街を破壊していたんだって聞かされて。「東宝チャンピオンまつり」って、リバイバルと新作を交互にやるんですよ。

――「キングコング対ゴジラ」も、リバイバルのほうで初めて観たんですよね。

切通:リバイバルで「キングコング対ゴジラ」とか「モスラ対ゴジラ」を観ると、悪いやつじゃんゴジラって、思ったわけ。あと、1960年代までの作品って、ドラマのメインで子どもがからまないんですよ。それはウルトラマンもそうで、「ウルトラマン」シリーズ最初の「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の3作っていうのは、子どもが中心になる回もあるけど、基本は怪事件を追うことが中心だった。特に視聴者層を決めずに小学校高学年から中学生くらいの視聴者層でスタートして円谷プロが海外戦略をしていったんだけど、どうしてもアメリカのテレビ局では自国の番組もある中で、まったく同列に扱われるのはなかなか難しい。

ということで、やっぱり「帰ってきたウルトラマン」以降は、日本の子どもたち向けになっていくんですよね。それ以降の4作「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンA(エース)」「ウルトラマンタロウ」「ウルトラマンレオ」」っていうのは、「ウルトラマンA(エース)」は若干ブレはあるんだけど、全体的に小学生の子どもが出てきて、その子どもに親がいなかったりする。いても途中で死んじゃったりして。

――そうですね。

切通:その子とウルトラマンに変身する隊員が交流して、1年間かけて子どもが成長していくとお兄さん的存在のウルトラマンの隊員が光の国に帰って行き、その子どもが成長して終わるっていう話が、基本線なんですよね。そこには、怪獣っていうのは子どものもので、子どもの心が生み出しているという視点があった。そういう時代の子どもに焦点をあてた本です。

今井:1970年代ですね。

切通:1970年代の前半っていうのは、単に新作としてそういうものが上映されたり放映されていただけじゃなく、過去の1960年代の作品も「東宝チャンピオンまつり」でやっていたりとか。あとTVで繰り返し繰り返し「ガメラ」とかを放送していたので、まさに怪獣にどっぷり浸かっていた自分を通して。当時の怪獣少年のあり方を浮き彫りにしようとしたんですよ。

今井:1970年代に少年時代を過ごしたときの目線ですね。

切通:そのリアリティで書いているんだけど、もちろんその時代の人たちが懐かしめばいいっていうことよりは、僕は怪獣ってどこか<子ども心>っていうものと、切っても切り離せないものがあるんじゃないのかなと。子どもの中にある破壊衝動とか、それと裏腹にヒーローを求める気持ちとか、子どもの混沌とした心理っていうものに対して、70年代の怪獣ブームの中の作品は、目を向けていたんじゃないかと思うんです。

今井:そういった意味で「ガメラ」っていうのは、その前哨戦として特徴的っていうか。

切通:昭和「ガメラ」っていうのは、今回の新刊で脚本家の高橋二三(にいさん)さんっていう人のインタビューが載っているんだけど、最初は「007」シリーズの悪役が猫を抱いているみたいな。

――スペクターみたいな。

切通:そういう悪の意外性の演出で、子どもに優しくするっていう面を書いている。

――その目線なんですか。

切通:子どもには優しいけど、ゴーゴークラブで踊っている若者は焼き殺すみたいな、そういうギャップの表現ですね。1作目「大怪獣ガメラ」では、ガメラは灯台から落ちた子どもを思わず救っている。その子どもは自分が捨てた亀が怪獣になって暴れて東京の街を焦土と化してしまったのではないかという後悔の念にかられる、というドラマを高橋さんは描いたんだけども、それがだんだん発展していって、ガメラが子どもの味方になっていく。

今井:ああ、そうですね。

切通:3作目「大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス」で、ガメラは子どもの味方だっていう方向に転換し始めて、4作目「ガメラ対宇宙怪獣バイラス」あたりから徹底的に子どもの友だちになっていくんだけども、それに東宝も影響を受けるんですよ。ゴジラも「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」っていう映画で、子どもの心の中で怪獣を生み出すっていうことをやっている。子どもの心の中で怪獣を生み出すっていうのは、実は第2期の「帰ってきたウルトラマン」以降のウルトラシリーズにも影響を与えている。だから昭和「ガメラ」と「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」を中継して、「帰ってきたウルトラマン」へ至る流れがあるんだけど、あんまり特撮ファンは語りたがらない! そこは恥ずかしい時期だから(笑)

今井:子ども向けだからダサいっていう?

切通:ダサい時期で。「シン・ゴジラ」でいうと、恋愛ドラマとか家族ドラマとかを東宝の人たちに入れろって言われたんだけど、入れなかったという話が伝わっているじゃないですか。余計な人間ドラマを入れるなという姿勢が特撮ファンに支持された。

――(庵野さんが)蹴っ飛ばしたんですよね。

切通:昔の1950年代の映画にいっぱいお客が来ていた黄金期や、1960年代の「ウルトラマン」シリーズを観て育ってきた人たちからすれば、SF的発想を純粋に追求したものがいいのであって。「ガメラ」のように子どもの味方だとか、「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」みたいに子どもの夢だとか、少年の成長を1年間かけてウルトラマンが見守るだとか、そういうのは、もう無かったことにしようみたいな、そういう感覚ってあるんですよ。実は僕自身も、そう思っていたところがあります。でもその時期は、ある種の歴史の必然だったのではないかと思って、いまあえてそこに目を向けるというのが新刊のコンセプトです。

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